身近なアクセサリーとして再生
・眠った服を復活!
かれこれ15年前、ふらりと立ち寄ったお店で購入したカジュアルシャツは、着る機会が殆どなく久々にクローゼットの奥から発見したとの事です。今回、シャツを再生したいとご依頼を頂きました。素材は合成繊維ポリエステル系で緯糸に強撚糸と経糸に無加工糸を使用した平織の楊柳地です。またの名はクレープ地ともいわれ、主に天然繊維植物系の麻や木綿などを使用した素材は夏向けの衣類によく使用される生地です。そもそも、楊柳地とは生地の表面が縦方向に凹凸のある「しぼ」が入っており、それが柳の葉を重ねたように見えることから呼称されています。それにしても、なかなかインパクトのある背面のデザインはおもしろい!長期保存のようですが、状態は良好でした。

ところで、背面の裏に付いていたタグ「RAG OUT]を調べると、「ファッションセンターしまむら」の子会社で1997(平成9)年にヤングカジュアルファッションを取り扱うブランドとして株式会社「アベイル」が設立されていました。当時、メンズファッションのブランド「RAG OUT」として販売されていたようです。その後、2009(平成21)年には「しまむら」に吸収合併しています。因みに「しまむら」ヒストリーですが、1923(大正13)年に埼玉県比企郡小川町にて「島村呉服店」を創業し、その後1961(昭和36)年に「しまむら」チェーンを開業し現在に至っています。思っていたよりも歴史の深い会社でした。

さて、おおよそ15年前に購入したシャツは退色および生地等に裂け等もなく、さらにミシン目を解いて接ぎ合せ加工をしたとしても凹凸のしぼ効果により、ほとんど接ぎが目立たないと判断致しました。そこで、春夏の休日にぶらりと出かけるファッションアイテムとして、トートバックとピアネス・タイ(蝶ネクタイ)をご提案させていただきました。仕上がりまで今暫くお待ちいただきます。
・解体・裁断
はじめに、トートバックの開口部に付けるパイピングの足し布用として、衿裏についていた肩山裏と同一の白黒ギンガムチェックを解体します。引き続き、身頃の脇縫いを外しさらに両袖を解体し立体のシャツを平面体の布地に整形していきます。事前にトートバックとして考案したデザインから使用する部位に標を入れ、さらに残布となる用布からネクタイ用の要尺を確認し部位に選別していきます。今回、身頃の脇布を首回りの一部用布として使用し、さらに残布となった両袖の格子柄を合わせた後、蝶ネクタイの本体布とリボン結び布さらに首廻りの足し布として活用致します。また、肩山裏に縫われていたロゴを外しトートの開口部となる肩山を直線に裁断します。





・縫製
仕立ては、全て手縫いでおこない表面化する格子柄は極力柄を合わせて縫製していきます。ちなみに、布地の状態は良好ですが、トートバックとして使用するには薄く伸縮性が大きいため、裏地には厚手のシーチングと接着心を使用して強度を確保することに致します。シャープ感を出しつつ、表面の風合いを保持する軽やかなアイテムに仕上げていきます。またバックの形態は、長方形型の直方体になるよう側面と底面にマチがあるように縫製し摘み縫いの技法で端始末をしていきます。なおシャツの胸ポケットは表面と裏ポケットに配置致します。さらに、持ち手にはかなり太めの綿テープを取り付け、握る部分肩にかかる位置では細目に仕上げ持ちやすさに配慮致します。最後、開口部にスナップをつけ白黒のギンガムチェックをパイピングし完了です。








・完成
完了後、アイロン仕上げで形を整えから持ち手にシャツ裏についていたタグを縫い付けます。ピアネス・タイには風合いを保ちながら芯地を入れて張りのある蝶ネクタイを表現いたしました。


・おわりに
来年の夏には、ストローハットにハーフパンツでお気楽に外出するによろしいかと・・・。実は、普段使いと言いながらかなり贅沢に馬のす入りの芯地を使用したピアネス・タイとさせていただきました。夏競馬、トゥインクルレースなどシャレオツのアイテムにいかがでしょうか。またのご依頼をお待ちしております。

